Exhibition

砂と泉

Spirit of Sand

2022

 久保田沙耶は、倉吉市明倫地区で行われてきたアーティスト・イン・レジデンス事業「明倫AIR」の招聘アーティストとして2017年より2023年まで毎年倉吉へと通い、滞在制作と発表を続けてきました。郷土の文化や風習、歴史、芸術作品などのリサーチを重ねる中で、1920年に中井金三らによって設立された総合芸術団体「砂丘社」とその周辺の作家たちに注目します。久保田はそれらの作品の模写を重ねることで身体的に会得した感覚から、砂丘社の同人たちが相互に技法の共有をしていたのではないか、といった仮説を導き出し、またその技法や特徴を自らの作品制作に取り入れるという試みを続けてきました。  本展で展示するシリーズ<とりいそぐかたち/ The shape for now)は、数年に渡る模写や作家たちの振る舞いの模倣を通じて、倉吉の先人たちに学んだ「手癖」を活かした集大成とも言える作品です。倉吉の街中で咲きかけの椿に「未来の予感」と「過去の名残」を留めた姿をみた久保田は、そのような複数の時間軸を同時に含むようなプレを含んだ絵画が描けないか、と考えたといいます。模写を重ねるうちにいつからか引けるようになってきた新たな「線」を活かし、長谷川富三郎や徳吉英雄といった郷土の作家たちがこれまでも描いてきた「椿」や、長谷寺の「絵馬」などのモチーフを、現代倉吉の風景としてあらためて描きます。久保田の作品としては珍しいモノクロの絵画は、息を殺し、先人たちの気配を感じながら、動き出す線の声を聞くことに集中した結果だと言えるのかもしれません。  タイトルの「砂と泉」は砂丘社の詩人、河本緑石による宜言文「砂丘創生之記』(1921)に由来します。「砂丘社」の「砂丘」は倉吉の北の海沿いに広がり、過酷な濯機の歴史を持つ北条砂丘を指します。砂丘開拓地に薄いた「泉」のように、「未地」に「最初の鍬」を取るようにと始まった砂丘社の歴史を、源泉から今に続く水脈のひとつひとつを辿るように久保田はリサーチしてきました。本展で久保田の描く個々の線に、複数の郷士の作家たちの気配が感じ取れるでしょう。 (アート格納庫M 岡田有美子)

Curator Yumiko Okada
Place アート格納庫M(鳥取)